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降下火山灰について

 火山から噴出した火山灰は,偏西風によって東方に運ばれ,急峻な山岳地域,すり鉢状の盆地,広大な平野に広がる丘陵や台地,および日本列島を取り囲む海の底などに降り積もっています.
 山岳地域に降り積もった火山灰は,雨水などによりまもなく流失してしまいますが, 盆地や平野に積もった火山灰は,河川水などによって流失されてしまう地域を除くと長期間保存され,海底に積もった火山灰も侵食されずに保存されています。
 現在,陸上に見られる火山灰は長期間風化作用を受けてきたため,赤土(ローム)や褐色および青灰色の粘土などに変化してしまっています。赤土(ローム)は、火山灰中の鉄が、長い期間をかけてサビて赤色化したと考えられます。また,下総台地の常総粘土,大宮台地の川口粘土,武蔵野台地の淀橋粘土などは,現在より海水面に近い高さに長期間存在していたため,波浪や潮汐などの海水の影響を受けて,青灰色~褐色粘土に変わってしまった火山灰であると考えられます。
 地層中に挟まっている火山灰・軽石・スコリアなどの火山噴出物は広い地域に降り積もりますから,距離の離れた地域の地層中に同時期の火山噴出物が見つかれば,地層と地層の比較や対比ができ,複数の地域の歴史を明らかにすることが可能です。
このような学問を火山灰編年学 (Tephrochronology) と呼んでいます。

テフラの宝庫(銚子市屏風ヶ浦)

Pm-Iの噴出源(木曽御岳火山)

 火山灰中には,雲母や鉄およびかんらん石や輝石・角閃石・石英・斜長石などの結晶質な鉱物と,火山ガラスやスコリアなどの非晶質な鉱物が存在し,鉱物の種類や組み合わせなどから火山灰や火山岩の性質が推定でき,噴出源である火山や噴出時代も特定が可能になってきています。
 最近では,X線や磁性などを利用した研究が鉱物の特性の解明に広く応用され,研究の主流となってきています。また,火山灰中の鉱物の種類や組み合わせのみならず,鉱物自身の物理化学的特性にも研究が進められ,野外調査中心の層位学に代わって,室内実験による鉱物の特性およびその結果を応用した地質史の編年なども可能になりつつあり,野外調査が軽視される傾向にあります。
2021.12.2. 更新日