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第四紀文献センターは鉱物の販売や分析などを行っております

「火山灰中の鉱物 検索・鑑定図鑑」の販売

頁をめくっているだけで興味が湧き,肉眼・ルーペ・双眼実体顕微鏡・偏光顕微鏡などの観察に役立つ図鑑です.火山灰中の鉱物を対象にした図鑑は今までに出版されたことがありません。
最近,火山灰中に存在が知られていなかった鉱物が見つかってきています。
これからも多種類の鉱物が見つかると思いますが,これまでに確認された鉱物を主に,検索・鑑定のための図鑑を出版いたしました。
火山灰中の鉱物に対する新知見や新発見の可能性などが本図鑑から生まれることでしょう。

A5判オールカラー (237頁), 上製本,
ビニールカバー,化粧箱付

定価8,500円 (+郵送料360円位)

書店での販売は行っておりません!

※ 上記図鑑のご注文はHPの ≪ご注文・お問合せ≫ , あるいは Eメール (pumicestone@ozzio.jp) でお願いいたします。

※ お支払は納品後,郵便振替か銀行振込 (振込先は請求書に記載) でお願いいたします。

※ 納品時に同封いたします郵便振替用紙でお支払なら,振込手数料は無料です。

※ ご注文に際して, 見積・納品・請求書の宛先名をお知らせください。



以降に,本図鑑を抜粋して紹介します。

資料採取地の一例

桑名市IC西方

十日町市中条乙

大磯丘陵曽我大沢

01) 鉱物名:高温石英(high-quartz) -鉱物の記載例-

化学組成:SiO2
結晶系:六方晶系
形 状:六角両錐形・たまご形・角ばった不定形・溶蝕を受けたような形
透過光の色調:無色
反射光の色調:無色

KaP-5 (直交ニコル)

透明度:無色透明
光 沢:硝子光沢
比 重:2.65
磁 性:なし
条 痕:白色
劈 開・裂 開:なし・なし
複屈折:低い.0.009 (白色~灰色)
多色性:なし
光学性 (光学的正負):結晶質異方性,一軸性正(+)
屈折率:ε= 1.553±0.001,ω= 1.544±0.001
(カナダバルサムより少し高い)
消光角:0° (直消光)
干渉色:第一次 (白色~黄色など)

光学的方位:Z = c
光学的分散:弱い
伸長方向の光学的正負:柱状結晶ではないので対象外です。
備 考:
フッ化水素酸 (HF) 以外の酸に不溶ですが,溶融した炭酸ソーダやソーダ灰とか洗濯ソーダと呼ばれる炭酸ナトリウム ( Na2CO3) に溶けます。
高温石英は多摩火山灰層中~下部に多く,多摩火山灰層上部および新期~中期火山灰層の立川・武蔵野・下末吉火山灰層にはほとんど存在しません。また,六角両錐状の自形の高温石英は,多摩火山灰層中でも特定の軽石層中に存在し,おおくは不定形の状態です。屈折率がカナダバルサム (1.53±0.01) より高いので,対物レンズをプレパラート中の石英から遠ざけるとベッケ線は石英の方へ,近づければカナダバルサムの方へ動きます。低温型の石英や水晶は火山灰中には存在しませんし,混入の報告もありません。六角両錐形の自形結晶の高温石英が多量に存在する軽石層は,鍵層として有用だと考えられます。

 

 

07) 鉱物名:黒雲母(biotite) -鉱物の記載例-

化学組成:K(Mg, Fe)3(AlSi3O10)(OH)2,
結晶系:単斜晶系
形 状:鱗片状・葉片状・六角板状・稀に蛇腹状
透過光の色調:薄茶色・茶褐色・褐色・黒褐色・不透明
反射光の色調:黄金色・銀白色・薄茶色・茶色・茶褐色・褐色・黒褐色
透明度:透明~不透明光 沢:硝子光沢~真珠光沢・粗目状光沢
比 重:2.95±0.45 (平均 = 3.09)
硬 度:2.5~3
磁 性:なし
条 痕:灰色
光学性 (光学的正負):結晶質異方性,二軸性負(-)
劈 開・裂 開:(001)に平行で完全・なし

新鮮な黒雲母(Ks22) (開放ニコル)

風化した黒雲母(HBP) (開放ニコル)

同左 (直交ニコル)

XRD:14.73(4), 10.06(100), 5.06(4), 3.68(2), 3.37(94), 3.17(2), 2.94(2), 2.53(11), 2.02(5), 1.68(4), 1.55(2), 1.44(2), 1.37(2), 1.27(2)

 

伸長方向の光学的正負:ほとんど正(+)
干渉色:第三次~第五次以上
屈折率:α= 1.595±0.03,β≒γ= 1.650±0.046
複屈折:大きい.0.033~0.080 (鮮やかな紅~緑)
消光角:0° (直消光) (3°以内で斜消光を示す時があります)
光軸角:2V = 0~30° (Xは劈開面にほぼ垂直で光軸角は0°に近い)
光学的方位:X ∧c = 7°,Y = b,Z ∧a = 0~9°
光学的分散:弱い.r<vあるいはr>v
多色性:強い.X:淡褐色・黄色・緑褐色,Y:暗赤褐色・暗褐色・暗緑色,Z:黄褐色・暗緑色・暗褐色・暗赤褐色

 

 

備 考:
硫酸で漂白され侵されます.酸・塩基に不溶ですが,多くは酸・塩基で脱色され,硫黄酸化物に侵されます。第四紀中期~古期火山灰層中の黒雲母は風化作用により本来の性質を失い,脱色されて白色~銀白色に見え,顕微鏡下では黄金色や茶褐色~薄茶色に見え光学性を示さないのが普通です。肉眼では新鮮な黒色を呈していても,干渉像が明瞭に見える黒雲母は少ないです。劈開が風化してアコーディオンのように伸びたものを蛭石といいます。第四紀初頭以前の黒雲母は,海成層や湖成層の火山灰中に限られ,肉眼的には風化度が弱く新鮮な黒色ですが,光学性は変化しています。多色性の明暗が電気石と黒雲母では方向が90°異なり,下方ポーラー (ポラライザー) の振動方向で黒雲母は暗く (濃く: 劈開方向),電気石は明るく (薄く: 劈開方向) 見えます。これは下方ポーラーの振動方向と同じ場合に黒雲母の吸収が大きく,電気石では小さいためで,下方ポーラーの振動方向は顕微鏡を前にして前後ではなく左右の方向になります。現在,ニコンやオリンパスなどすべてがこの方向になりましたが,市販の蔵書は以前のまま記載されている場合が多く見受けられますので,注意が必要です。

 

67) 鉱物名:鮮緑色火山ガラス(emerald-green-type) -鉱物の記載例-

化学組成:SiO2
形 状:碇状
透過光の色調:淡青緑色
反射光の色調:淡青緑色
透明度:透明
比 重:2.35±0.04

昭和IC (開放ニコル+ノーカバー)

同左 (直交ニコル+ノーカバー)

磁 性:弱い磁性
光学性 (光学的正負):周縁部は非晶質等方性.開放ニコルで無色透明,直行ニコルで暗黒色. 中央部は結晶質異方性.開放ニコルで鮮緑色.直行ニコルで消光.
屈折率:1.49~1.60
備 考:
赤城高原の上部ローム中で偶然見つかりました.碇状の火山ガラスの先端が折れてしまいました。稜線に沿う鮮緑色 (エメラルドグリーン) の中央部は消光するので結晶質で,周縁部は無色透明で消光しないので非晶質です。写真では無色透明の周縁部が確認しにくいですが,幅広の帯状の周縁部を占めています。なお,化学成分は中央部と周辺部では多少の差があり,表の値は中央部と周辺部の平均値です。

 

69) 似非鉱物名:海面骨針(Spongespicule)とSiliconsphaera spp.

海成層中の火山灰を検鏡していると,珪質な海綿骨針 (Sponge spicule) が確認され稀に乙姫様のシラミの卵 (Otohimesama-no Shirami-no Tamago)と俗称されている海綿の構造物から分離したと考えられるSilicosphaera spp. が存在します。

 

海綿骨針 (針状)とSilicosphaera spp。 (球状) の倍率を変えて表示しました (透過光)。比重は火山ガラスより低く,2.26 ± 0.04位です。

同上 (反射光)

同上 (反射光)


図鑑をご購入された方へ郵送いたしました訂正内容が,転居先不明で返送されて参りました。

この結果,未着の方が若干おられ,この方の閲覧を願いたいと思い,以下に訂正内容を掲載いたします。

(※ 印刷してご確認いただけるようPDFもご用意しております。PDFのダウンロードはこちら)

 


 

各位様
出版後見つかった誤りがあり,以下に加筆訂正および差し替えをお願いいたします。
差し替えに必要な図は3枚ですが, そのまま糊付け可能なように等倍になっております。
挟んでおくだけでも良いと思いますが,紛失しないようにお願いいたします。

 

p.4上から11行目 : 東京自然史機構の前に,(株) 古澤地質の古澤 明博士, 都留文科大学の上杉 陽名誉教授を加筆願います。
p.4上から14行目 : 福岡孝明元教授を福岡孝昭元教授に訂正願います。
p.199  : 表中の (熱田層) を (碧海層) に訂正願います。
p.123  : 菫青石の多色性の図を差し替え願います (p48~49参照)。
p.127  : 大隅石の多色性の図を差し替え願います (p48~49参照)。
p.128  : 大隅石の伸長方向の光学的正負が逆でしたので,差し替えをお願いいたします。

 

p127 大隅石の多色性の図(p48~49参照)

 

p128 大隅石の伸長方向の光学的正負が逆でした。

 

 

また,「火山灰中の鉱物 検索・鑑定図鑑」の120~122頁に掲載したローソン石が別物ではないかという指摘を受けました。そこで,微小領域X線回折ならローソン石か否かのデータが得られるので,図鑑に掲載した試料の分析を依頼する目的で試料を探しましたが見つかりませんでした。
そこで,新たに試料を7kgと3kgの2回に分けて洗い,重液分離やマグネティックセパレーターで濃集し,ローソン石らしい鉱物を探しましたが,図鑑に示すような鉱物は見つかりませんでした。この間1年半以上の日程と,数十万粒におよぶ鉱物を双眼実体顕微鏡と双眼偏光顕微鏡で顕鏡いたしました。
やや性質が類似している鉱物を1粒見つけましたので,微小領域X線回折測定を行っていただきました。その結果は,ローソン石ではなくクリノゾイサイト (斜灰簾石) であることが判明いたしました。
ローソン石は発見できないままですが,今後も引き続いて調べていく予定です。ただ,これまで採取してきた多くの地域の火山灰が未処理のため,これらの火山灰の中にもローソン石の存在を期待して,従来の試料と並行して処理を行っていきたいと思いますが,次回からは個々人への連絡は割愛させていただき, 何かございました場合にはこのHPでお知らせいたしたいと思います。
本報告に際し, 微小領域X線回折分析を早稲田大学理工学術院の山崎淳司教授および安井万奈客員研究員にお世話になりました。また, 加藤 昭博士(元国立科学博物館)には測定鉱物の鑑定でお世話になり, 宮下 敦博士 (成蹊大学)には終始お手を煩わせてしまいました。お世話になった上記の方々に感謝いたします。

XRD : 2.89(97), 2.81(41), 2.65(56), 2.59(62), 2.39(68), 2.29(57), 2.16(100), 2.09(100), 1.87(60), 1.63(58), 1.46(46), 1.40(46), 1.39(33)

なお,今回明らかとなったクリノゾイサイト (斜灰簾石) の微小領域X線回折分析の結果と, (株) 第四紀地質研究所の井上 巖博士によるEDSの分析結果を掲載いたします。

敬具

 

 


 

また、ローソン石を探す目的で顕鏡している間に似非鉱物が3種類見つかりましたので以下に報告します。

1.底生有孔虫

2.海綿骨針

3.海綿骨針(?)

1番目は底生有孔虫,2番目はツノ状の海綿骨針,3番目はヒトデ状の海綿骨針(?)であろうと東京自然史研究機構の細野 衛氏等の見解から推測されます。
化石の大きさは,底生有孔虫が1㎜位,角状の海綿骨針が数百㎛,ヒトデ状の海綿骨針(?)が100㎛以下の大きさです。
火山灰の堆積環境などの推定に役立ちそうです。